東京地方裁判所 昭和60年(ワ)7392号 判決 1986年9月19日
原告
東映動画株式会社
右代表者代表取締役
今田智憲
右訴訟代理人弁護士
村下武司
河合英男
被告
広瀬久照
被告
日商貿易株式会社
右代表者代表取締役
広瀬久照
主文
一 被告日商貿易株式会社は、別紙目録(一)ないし(八)表示の軟質プラスチック製人形を販売し、又は頒布してはならない。
二 被告日商貿易株式会社は、その占有する前項記載の物件を廃棄せよ。
三 被告らは、原告に対し、各自金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年七月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
五 この判決は仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1(一) 原告は、テレビ漫画映画「キン肉マン」(以下、「本件映画」という。)を製作したものであり、その著作権(以下、「本件著作権」という。)を有している。
(二) 本件映画は、地球から五〇〇億光年離れた大キン肉星という架空の天体に存在するキン肉王国の王子である「キン肉マン」が、地球において成長し、やがて格闘技宇宙一をめざして挑戦してくる超人を相手として戦うというプロレスアクション物語であり、主人公である「キン肉マン」の外、「ミートくん」、「キン骨マン」、「スカイマン」、「リキシマン」、「テイーパックマン」、「スマイルマン」、「ペンタゴン」等多数のキャラクターが登場する一話約一三分の連続漫画映画である。
2 被告広瀬久照は、被告日商貿易株式会社(以下、「被告日商貿易」という。)の代表取締役であるが、訴外星文治郎と共同して、昭和五九年三月以降、訴外株式会社星プラスチック工業所をして合計二四〇万四九九〇個の別紙目録(一)ないし(八)表示の軟質プラスチック製人形(以下、まとめて「被告人形」という。)を製造させ、被告日商貿易をして合計二三〇万六四九〇個の被告人形を販売させた。
3 被告人形は、いずれも前記1(二)記載の本件映画のキャラクターの姿態をそのまま三次元的に作出し、有形的に再製したものである。
4 被告日商貿易は、前記のとおり被告人形が本件著作権を侵害するものであることを知りながら、被告人形を販売し、被告広瀬久照も右の情を知りながら、被告日商貿易をして被告人形を販売させた。また被告人形は本件著作権侵害行為を組成する物である。
5 被告日商貿易が前記2のとおり被告人形を販売したことにより得た利益の額は次のとおりである。
(一) 売上金合計 一億六二二八万二二〇〇円
その内訳は次のとおりである。
(1) 被告日商貿易が他者に卸売りした被告人形は、合計一〇二万〇四〇〇個で単価三三円であるから、売上額は三三六七万三二〇〇円である。
(2) 被告日商貿易が自動販売機によつて販売した被告人形は、合計一二八万六〇九〇個で単価一〇〇円であるから、売上額は一億二八六〇万九〇〇〇円である。
(二) 販売経費合計 一億三七七九万二六五〇円
その内訳は次のとおりである。
(1) 被告人形の仕入金額は、合計六〇六二万七二五〇円である。
(2) 自動販売機の設置料は、被告人形一個につき二五円を超えないから、合計三二一五万二二五〇円を超えない。
(3) 被告人形のカプセル詰めに要する費用は、一個一〇円を超えないから合計一二八六万〇九〇〇円を超えない。
(4) (2)の設置料を除く自動販売機での販売費用は、被告人形一個につき二五円を超えないから合計三二一五万二二五〇円を超えない。
(5) 被告人形を他者に卸売するには費用を要しない。
(三) 前記(一)の売上金合計額から同(二)の販売経費合計額を控除すると被告日商貿易が被告人形の販売により得た利益の額は少なくとも二四四八万九五五〇円である。
6 よつて、原告は、本件著作権に基づき、被告日商貿易に対し、被告人形の販売、頒布の差止及びその占有する被告人形の廃棄を求めるとともに、被告らに対し本件著作権侵害行為による前記損害金二四四八万九五五〇円の内金二〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である昭和六〇年七月五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を各自支払うことを求める。
二 請求の原因に対する認否
1 請求の原因1ないし4の事実はいずれも認める。
2(一) 同5(一)冒頭の事実は否認する。
(1) 同(一)(1)の事実は認める。
(2) 同(一)(2)の事実のうち、販売個数を認め、その余は否認する。被告人形一個の販売単価は自動販売機の場合六七円である。
(二) 同5(二)冒頭の事実は否認する。
(1) 同(二)(1)の事実は認める。
(2) 同(二)(2)ないし(5)の事実はいずれも否認する。販売経費は合計五五〇〇万円である。
(三) 同5(三)の事実は否認する。
第三 証拠<省略>
理由
一請求の原因1(原告の本件著作権とそのキャラクター)、同2(被告らの被告人形の製造、販売)、同3(本件映画のキャラクターの複製)、同4(被告人形の知情頒布)の各事実は当事者間に争いがなく、右によれば、被告らは故意により本件著作権を侵害したものと認められる。
二原告が受けた損害について判断するに、請求の原因5(一)(1)、同(二)(1)の事実は当事者間に争いがなく、また<証拠>によれば、請求の原因5(一)(2)、同(二)(2)ないし(5)の事実が認められ、右によれば、被告らが被告人形の販売により得た利益の額は、少なくとも二四四八万九五五〇円を下らないものと認められ、原告が受けた損害の額は著作権法一一四条一項の規定により右同額と推定される。
三以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文、仮執行宣言について同法一九六条一項の各規定を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官元木 伸 裁判官安倉孝弘 裁判官設楽隆一)